おがたかお の 塊

生きる最速の文章たち

夏がくれた

入院していたら、2019年の夏が終わってしまった

海にも行ってないな

遊園地も行ってない

病院の作業療法でかき氷は食べた

コーラのシロップをかけた、甘かった

 

言葉も浮かばないような

光がいっぱいみたいな音楽を聴いて

泣きそうなだけ

院内は自由に歩けるようになった

 

なんだったのかな

夢を見ていた、魔法だった

それが現実なんだな

全て、思い込んだ通り

出逢えなくてもいいや

 

夫が可愛くて、それでいいや

私は腹をくくって

こうして文章にしている

やたらドラマチックな気分で

そのまま、書いている

素直な言葉で、私は私を書いている

 

大きすぎて伝えられない部分

また振りかえるのが大変だ

記憶がおかしくて、笑えたり

ヤバい、どこいくの、わたし

未だ行方不明

帰れない夏が終わるのか

秋、ひたすら、待ってる

 

夫とまた暮らせたら、行きたいところがあるね

リゾット食べたり、カラヴァッチオの展示も行きたいね

カラオケで歌ったり、夜に抱き合ったり

お互いの存在が、際立って

あなたのためにまた、家にいるのかもだった

 

一緒に暮らし始めた頃みたいに

それだけで、満足みたいに

 

終わりが来るのを知っていながら

それでもずっとなんて言うんだろう

 

なんとかやってきた、33年間

終わりたいような気持ちで少し

これからを楽しみにしながら

夏を惜しんでいる

 

先生、わたし、治りますか

 

一生、きっと、おかしいんじゃないですか

 

 

 

夫が泣いている

 

暗いところで、私を待ちながら後悔して

 

会えたら、もう大丈夫だって教えて

 

過去のことはもういいよ

 

夏は終わったことにして

未来の季節に生きようよ

 

 

 

これから、もっと、幸せになるような気持ちで

きっと、私たち、大丈夫だって教えて

 

たくさんの先生に問い続ける

わたし、良くなりますよね

 

 

夏、さよなら、さよなら

 

この文章を終わりたくない

 

 

隣でアキモトさんがたまに話しかけてきて

私の浸りきった世界が中断すると

またくだらない日常が戻ってきて

作業療法の先生の身近な人が亡くなったときいた

だから、今日は静かだったんですねなんて

普通のことで、大変だねえ、なんて言って

そこでは私は入院中なのに普通で

ごくごく当たり前に息をしている

 

ボワァアアっとしたポエムヴェールを保てず

私はどうやら、帰るらしい

 

夫も可愛くて、好きだし

普通に、日常で、ポエムはたまにで

そのたまにに浸っては

芸術家になれないな、こんな志しでは

なんて、どこかでは、あきらめてない自分を

なんとなく頼もしくも馬鹿だと思う

 

芸術家になるんだろうか

世間でそう呼ばれるだろうか

 

嫌なんだか、嬉しいんだか

 

伝えたいような

誰に?あなたに

私じゃあない、あなたに伝えたい