おがたかお の 塊

生きる最速の文章たち

絶壁ヨクネルコ第二話

第二話「私はビヨーン」

 

寝太郎は何も知らない

私が存在する呪われた理由も、自らの優しさや賢明さも

まだまだ何も知らない子どもなんだ

動かせるのは腕だけの私にも身体はあって

今は強力な石結界の下に封じ込められてしまっている

私のことが唯一見える寝太郎

彼はまだ、石結界を除けられないんだ

育つまで待っている、できる限り愛を持って

でも利用しようと企んでいる?

そうかもしれない

私をこんな目にあわせている奴らに復讐したくて

憎らしくてならないから。

奴らに痛い目を見させるためなら、私はなんだってできる

一方で、目的を忘れてしまうくらい、寝太郎は可愛い

好きだ、このままずっと一緒に。

 

あの日のことはよく覚えている

寝太郎の兄のことは前から危うんでいた

邪気をまとっていた、魂を悪魔に引き渡したんだ

だからって最初から殺そうなど思ってなかったさ

兄の悪魔と火の奪い合いになって

私がムキになりすぎた

悪魔が寝太郎の呼吸を遮っているのをみて逆上した

魔法の調節がうまくいかなくて、兄の身体は炭と化した

 

人間の命を消すのは初めてだった

とにかく寝太郎だけは救おうと必死に抱き上げて中庭の池に運んだ

 

私は自分の何かが変わった気がした。

今はもう被害者意識だけではいられない

 

私も、結局は悪魔の仲間なんだ

罪悪感なんてなかった、悲しみも怒りもない

殺しをしても私は、まったくの正気だった

そういうものなのかな。

試しに、もっと、殺してみようかな??

 

 

 

私は寝太郎にビヨーンと呼ばれている

気に入っている名前

彼の元を離れれば、私は姿なき存在

魔法で、幼子の足をタイミングよく引っかけて

トラックに轢かせる遊びを始めた

 

 

 

 

 

私は変わった?

それとも元から、こういう良くない心を持っていたんだろうか?

そもそも良くない、という認識はどこからやってくるんだろうか?

悪いことだとは思う、子を亡くして涙する母親の涙が、美しくて辛い。

寝太郎はこんな私をどう思うだろうか?

 

 

 

「ビヨーン!どこに行ってたのさ?心配したよ」

「色が変わっている、また灰色が濃くなっているよ」

 

 

 

寝太郎のピュアな視線が痛いんだ

刺さる

 

 もう一緒に居られないかもしれない

もう助けてやれないかもしれない

 

可愛い寝太郎、馬鹿な私を許してくれる?

残酷な秘密が増えていく

 

 

 

続く