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おがたかお の 塊

物語をはじめよう

絶壁ヨクネルコ第一話

第一話「駆けだす記憶」

 

俺を寝かせてくれいえいえ~

 

友人タケチヨに

石山さよりのコンサートに誘われる

行ってみたらテンションおかしくなって

愛車の赤いフィットで峠をかっとばした

スピードに狂っていてカーブを曲がり切れなくて

ガードレールぶっちぎって飛んで宙に浮いた瞬間

長い長い走馬灯が始まったんだ

 

生まれたて、深海魚のモビールが回る部屋で

俺は泣いていたさ

このまま放置されたら死ぬんじゃないかと思って不安だった

身動きがあまりとれなくて助けを求めた

真っ白い手が遠くからビヨーンと伸びてきて

ガラガラで俺をあやす

最初の記憶

頭を撫でられ、俺はこの時、まだ頭蓋骨も割れていて

首も座っていなかったけど、手が温かくて優しかったから

声を張り上げなくて大丈夫になった

 

必死に呼ばなくても、俺にはいつも真っ白い手、名づけてビヨーンがいた

 

次の記憶だ

よちよち歩いている俺、テーブルの上の洋ナシめがけて。

なかなかうまく身体が動かなくてつんのめる

いつもの何倍もの速さでシュシュっとビヨーンがやってきて

フワッと俺を受け止めて洋ナシと一緒にベッドまで運んでくれる

「感謝」

思ったよりきちんと発音できて良かった、伝わったかな??

手に表情なんてないけど、ビヨーンはフヨフヨニコッと笑ったみたいだった

 

俺にはヤンチャな兄がいて、両親はいつもかかりっきり

俺は静かだったし、必要なものはビヨーンがくれたし

兄の行動に落胆憤怒する両親の後ろ姿ばかりが印象に残っている

 

あの日、なぜか家には俺と兄だけだったと思う

俺はキャンドル集めが趣味で部屋にいっぱいコレクションしてる

ハンドメイド一点もの、想いでの品、大量生産

色やまろっとした造形を楽しんでいた

そこに、両手にチャッカマンを持ってカチカチ点火させながら兄が登場する

「寝太郎、お前が憎いから、大切なもの、奪う」

兄に従っているかのような真っ黒い手に鼻口を押さえつけられ

苦しくて意識が遠のきそうな中で、次々と火の手が上がるのを目の端で見ていた

「消えろ」兄は楽しそうに言う

助けてビヨーン!!!!神様!!!!

 

気が付いた時には病院のベッド、兄は消し炭、家は全焼

両親精神崩壊、俺は8歳にして急激にいろいろ失った

だけど、虚無感はなかった、俺は世界を悟っていたから。

 

久しぶりに見たビヨーンは灰色になっていた

 

どうして??

 

 

続く