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おがたかお の 塊

物語をはじめよう

僕の電車が帰ってこない

レールも僕が敷いて、外装も緑色に塗ってやったんだった

気に入っていたし、7歳の誕生日にやってきて以来

自分の弟みたいに思っていた、名前はリュウヘイ号

死んだ犬の名前を受け継がせたんだ

辛い話、だけどこいつはしゃべらないし感情も意志も感じられないよ

スイッチを入れたら動き出すけれど

モーター音、僕は本当にはこいつのことわかってやれないんだ

年をとるにつれて、なんだかんだと忘れていってしまった

 

僕が13歳になった誕生日のことを書いておきたい

そう、リュウヘイ号が帰ってこなくなった時のことだ

父さん母さん僕、姉ちゃんでケーキを囲んでいたら

リュウヘイ号が話題に上がった

「もう6年前のことだね、プレゼントの包装を取って電車キットが出てきたときの」

「こいつの喜びようが忘れられないよね」

「車掌さんになるなんて決めてキリっとしちゃって」

「しばらく動かしてないんじゃない?かわいそう」

「そうだな、スイッチ、いれてみようか」

僕はリビングの床にレールを大きく円く敷いてリュウヘイ号の腹のスイッチを入れ

モーター音、道に乗せてやる

「まだまだ現役だなぁ」

のんびり家族で眺めていた、和やかな空気の中

緩やかなカーブを、ふわっと浮き上がって

そのまま空中を飛んでいく緑の車体

僕は「どうなってんだ??」なんて少しおかしかった

家族で「怪奇現象だ~」なんて笑っている間に

目の高さまでリュウヘイ号が上がってきて向き合った瞬間

バチっと電気が走ったような感覚があった

 

(ありがとう)

 

「うん?」

 

妙な声が天から降ってきたので思わず見上げた後目を戻すと

僕たち家族の前から、リュウヘイ号の姿はなくなっていた

 

僕ももう20歳になるけど

不思議な体験だったなぁ

あの天からの声を思い出すと、少し泣きそうになる

暖かい、懐かしい、透き通った声

誰ともわからない美しい響きだったよ

車掌になる夢はあきらめてない

今、頑張っているところ

もし、電車に関わる仕事につくことになったらなおさら

一生ついてまわるエピソードになるので

こうして書き付けておくことにした

 

読んでくれてありがとう